酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

形容詞の順番

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最近出版された『読まずにわかる こあら式英語のニュアンス図鑑』という本を読んでいたら(タイトルに反してやはり「読む」必要はあります(笑))、上の図のような「形容詞」を並べる順番に関する図が出てきました。

自分が中高のころにはっきりと習った記憶はないのですが、こうした話が図解でわかりやすく書かれているのは良いと思いました。他にも様々な単語/表現のニュアンスの違いなども説明されていて、中学生の副読本としてもお勧めできそうです。

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さて「形容詞の順番」の話題なのですが、もちろんこの話はこの書籍の著者のオリジナルではなく、類似の情報は既にいろいろあります(そして分類も微妙に違っている場合もありますけれど)。

たとえば、

Adjectives: order - English Grammar Today - Cambridge Dictionary

というページを見ると以下のような表が掲載されています。

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たとえば、以下のような例文の中でこの順番が守られていることをみることができます

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さて、これは英語の順番ですが、日本語の場合はどうなっているのでしょう。

ちょっと調べると

日英語の形容詞の語順の比較(PDF)

という資料がみつかりました(信州大学研究論集・研究報告)。この中では英語の分類はさらに細かく行われていて以下のような表も出てきています(PDFを見ると出典も書かれています)。

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ここに書いてある内容を見ると、日本語の場合はここまでは細かくは分けられていない分類が掲げられていました。

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もちろん、ここでの議論は「絶対的にこちらが正しい」というものではなく、「その順序が通常は好まれている」というのが前提です。

こうした議論を経て、もう少し抽象的なレベルで形容詞の順序を決める一般制約条件について最後にまとめているのですが、そこにはこのように書かれています(以下の①〜⑤は順序ではなく、順不同の制約条件です。ただし話し手の意識/価値観によってどの制約が優先されるかが変化すると、報告書には書いてあります)。

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なかなか面白い話題ですね。

よって英語から日本語に翻訳する場合にも、単純に英語の順番のまま日本語に並べて翻訳するとわかりにくい場合があります。

たとえば上の報告書の中の例では

old colorful pots

という表現の訳として

(a) 古い色鮮やかなツボ

(b) 色鮮やかな古いツボ

の二通りが考えられるが、上の④の制約によって「色鮮やかな」(長い)「古い」(短い)の順序の方が好まれることが多いと書かれています。

ご参考までに、自動翻訳にかけてみると、以下のような結果になりました。

Google翻訳:「古いカラフルな鉢」

DeepL翻訳:「色とりどりの鍋」

まあ「ツボ」「鉢」「鍋」は何が正しいのかは文脈に依存しますけれど ...DeepLはあっさりと「古い」を無視していますね。

さてここまでに書いた内容から、以下のクイズを考えてみましょう。

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a)、b)、c) のうちどれが正しい順番かというクイズです。

答えは以下のページの最後の部分を見て下さい。

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