酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

カスピアン王子のつのぶえ ナルニア国ものがたり (2)

カスピアン王子のつのぶえ―ナルニア国ものがたり〈2〉 (岩波少年文庫)

カスピアン王子のつのぶえ―ナルニア国ものがたり〈2〉 (岩波少年文庫)

ということで、「ライオンと魔女―ナルニア国ものがたり〈1〉 (岩波少年文庫)」に続く「ナルニア国ものがたり」の第2巻です。
第一巻で登場した四人の子供たちが、魔法の力によってふたたびナルニアに引き戻されるところから物語りは始まります。現実世界では一年しか経っていないのに、ナルニアでは四人が去ってから既に数百年以上の時が流れ、四人の子供たち(二人の王と二人の女王)やライオンのアスランも既に伝説となっています。
第一巻と比べてよりスケールアップした構成だと感じます。大げさな仕掛けが登場するわけではないのですが、登場人物の間の軋轢も描かれ、緊張がうまく持続するようになっており、やはり子供だけでなく、大人でも最後まで楽しめるお話だと思いました。
注意深く読み込んでいくと、相当に際どいことも書かれているのですが(特に差別の問題など)、これは大人自身が自分の問題としてむしろ消化すべきことでしょう。これを所謂 PC (Politically Correct) な物語にしてしまっては、物語の「陰」の部分が殺ぎ落とされて、平板な物語になりかねません*1。既存の物語はやはり歴史も刻んだそのままの表現のままとしておくのが(あまりに酷いものは別として)良いのではないでしょうか。まあそもそもファンタジーの世界に現実世界の差別構造と価値観を持ち込んで議論することのの虚しさもありそうですが…。
訳はこの第二巻の方がこなれて読みやすい印象を受けました。

*1:もちろん PC そのものの価値は認めるにしても