酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

遊覧日記

遊覧日記 (ちくま文庫)

遊覧日記 (ちくま文庫)

夫(作家武田泰淳氏)に先立たれた武田百合子氏が、いろいろな場所に出かけて見聞きしたものを「素直に綴った」エッセイ集です。すみませんどのように表現すれば一番適切かが難しいのですが、武田百合子氏の観察眼は非凡としかいいようがないように思います。
決して自身の感想や意見を書くことなく、ただ目の前にあるものを細かく観察して描写した文章。下手をすると退屈なものになりそうなスタイルにもかかわらず、なぜこんなにも活き活きとして色彩と音に溢れ、そして刺激的な描写なのでしょう。
常に文章のこちらがわに、微笑みながら対象を見つめる筆者の視線が見えるようです。