酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

LAST (ラスト)

LAST (ラスト) (講談社文庫)

LAST (ラスト) (講談社文庫)

都会に住む現代の少年達の生活を、活き活きと描き出した直木賞受賞作「4TEEN」の直後に出た、受賞第一作がこの短編集です*1。余計なお世話ですが「4TEEN」を読んだ人が、同じ路線を期待して読むと驚くこと請け合いです。
4TEEN」とは打って変わって、追い詰められた大人たちのダークな物語が続きます。それぞれの物語の中で、主人公達が追い詰められる理由はもっぱら借金とセックスなのですが、どの作品も口の中に苦いものを残すような終わり方をします。
多くの作品は、悪意があればむしろ救いがあるとさえ言えそうな、身も蓋もない経済原則に支配される「裏社会」の姿を描くことによって、読者の興味を惹きつけることに成功していますし、またデフォルメされた形とはいえ、この世の様々な矛盾を考えさせるヒントも散見されます。
しかし、誰にでも本書をお勧めできるかというと、そういうわけにはいかないでしょうね。グロテスクな描写も多いので、そういったものが苦手な人は避けたほうが賢明かもしれません。

*1:2003年に単行本が出版され、今回文庫本として出版されました