酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

バーテンダー 1

バーテンダー (Vol.1) (ジャンプ・コミックスデラックス)

バーテンダー (Vol.1) (ジャンプ・コミックスデラックス)

一部で話題になっていたので(笑)読んでみました。確かに「ソムリエ (1) (集英社文庫―コミック版)」のバーテンダー版です。お酒とバーとサービスに関する知識を楽しく学べる作品ですね。ソムリエのときにも思いましたが、原作者の城アラキ氏は結局、「質の良いサービスとは何か」について問い続けようとしているのだなと思います。そうした意味ではサービスのあり方を評する田中康夫氏の視線に近い印象を受けます。キーワードは「真っ当」*1。サービスを享受すべき空間は、食べ手、作り手、供し手の三者の配慮によって紡ぎだされるべきものというのが、田中氏の持論ですが、バーにおいてはバーテンダーが作り手と供し手を兼ね、食べ手は飲み手となって登場することになりますね。
ただ「物語」としてちょっと残念なのは、「主人公の見せ場を作ろうとするあまり、まわりの人間を無能として描きがち」な点です。たとえば、直射日光にバックバーを晒すデザインをしてしまう「一流」デザイナーとか、主人公がシュガーシロップの代わりに和三盆を使ったら「奇を衒っている」と言い放つ「一流」バーテンダーとか、プロとしてホステス業をやっているのに酒を飲まない女性とか、はたまた丁寧に作られたカクテルをことごとく「不味い」と拒否しながら、自販機のカップ酒を飲みたがる「お偉方」とか。
敵役が力不足であったり、卑小な人物であると物語のスケールもそれだけ矮小化してしまいますし、物語に安心して酔うことができなくなると思うのですが…(^-^;。是非がっぷり四つに組めるライバルに登場して欲しいところですね(たとえば「ソムリエ」の志村のような)。と、まあ読むほうは書くほうの苦労を無視して勝手なことを言うのですが…失礼。
そういえば「美味しんぼ (1) (ビッグコミックス)」の海原雄山も、登場当初は酷薄な性格で自説に拘る権威主義者のように描かれていましたが、それでは主人公と鎬を削る関係になれないと判断されたのか、途中から芸術至上主義者ではありながらも、権威に阿らない立派な人格者のような描写に移行して行きましたよねぇ。

*1:まあ田中氏の評論が大嫌いな人もいると思いますけどね。