酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

微生物 VS.人類ー感染症とどう戦うか

微生物VS.人類ー感染症とどう戦うか

微生物VS.人類ー感染症とどう戦うか

かつて1980年にWHOによって天然痘根絶宣言が出されたときは、人類の感染症への戦いは着実に勝利を収めつつあるような印象がありました。しかしここ近年、AIDS、鳥インフルエンザ、SARS、各種の出血熱などが出現拡大し、大きな問題になっています。また自然感染ではなく、米国で起きた炭疽菌テロなどのような人為的な悪意の介在する感染症や、薬剤耐性菌の出現による治療し難い感染症など、じつのところ私たちは非常に危ういバランスの上に暮らしているようです。インフルエンザなどは絶滅させる道筋を考えることすらできません。
最近の感染症事情をコンパクトに読める本がないかなと見ていて、この本を選びました。微生物の基礎から始まって、感染症を起こすメカニズムや、歴史的なトピック、上で挙げたような「最新」の国別感染症事情や、薬剤耐性菌の問題、話題(?)のプリオン感染症(BSEの類ですね)、わが国の伝染病予防行政の課題*1などについての話がまとめられています。ひととおり読むと新聞などに書かれている様々な感染症絡みの記事を読むのが楽になることでしょう。ただやはり、生物学、疫学、行政学、医学、農学などにまたがる広範な話題が詰め込まれているので、予備知識が全くないと少し読み進め難いかもしれません。

*1:途中、わが国のハンセン病行政のたどった歴史について触れられている場所もあります