go - went - gone
「行く」を意味する "go" は不規則活用する動詞としても有名です。
現在型、過去形、過去分詞が
go - went - gone
と変化します。go と gone はなんとなく繋がりがあるような気がしますが、真ん中の went が全く関係ないような気がします。
よくわからないときは辞書を引いてみましょう。
まずは素直に went を引いてみます。
まず『エースクラウン英和辞典』(第3版)
あっさりしています。新しい情報は得られませんでした。
出版社の説明によると
dictionary.sanseido-publ.co.jp
と書かれていて、「初級向け英和辞典の絶対エース」とあるように、初心者向けの内容になっています。最初の勉強には役立ちそうですが、今回の探求には向いていません。
ということでもう少し大きな辞書を引いてみましょう。
これは手元にある『研究社新英和大辞典』(第6版)の一部です。
[1] の内容は、エースクラウンと同じで「go の過去形」と言っているだけですが、[2] になにやら新しい情報が増えています。
「wend の過去形、過去分詞」という部分ですね。さらにその下には「もとは wend の過去形だったが 15世紀から go の過去形として用いられる」という説明があります。
どうやら go の過去形は昔は went ではないものだったのが、15世紀ころ本来は wend の過去形だった went で置き換えられてしまったようです。
とすると次は wend とは何かです。
段々語源に近付いているので、ここでは Wiktionary を引いてみます。
ここを見ると、語源について以下のような説明が書かれています。
Etymology[edit]
From Middle English wenden, from Old English wendan (“to turn, direct, wend one’s way, go, return, change, alter, vary, restore, happen, convert, translate”), from Proto-Germanic *wandijaną (“to turn”), causative of Proto-Germanic *windaną (“to wind”), from Proto-Indo-European *wendʰ- (“to turn, wind, braid”). Cognate with Dutch wenden (“to turn”), German wenden (“to turn, reverse”), Danish vende (“to turn”), Norwegian Bokmål vende (“to turn”), Norwegian Nynorsk venda (“to turn”), Swedish vända (“to turn, turn over, veer, direct”), Icelandic venda (“to wend, turn, change”), Gothic 𐍅𐌰𐌽𐌳𐌾𐌰𐌽 (wandjan, “to cause to turn”). Related to wind (Etymology 2).
転じる、進む、戻る、変わる ... といった意味をもった "wenden" から派生して、それは 、祖インドヨーロピアン語族の "wendʰ- "から派生したと書いてあります。この "wendʰ- " は "wind" の語源でもあって、「風が吹く」「曲がる」といったような意味のようです(不思議な表記法ですね)。
ということで語源は「風が吹く」といったところかららしいのですが、 wend そのものの意味は(再び「研究社新英和大辞典」より)
「転じる、進む、行く」といったもののようです。
ここで気になる記述がありますね
という部分です。
これが何を意味しているかと言えば、上の方にもありましたが「いま wend の過去形は wended だが、昔は went だった」と書いてあるのです。
wend に対して went、こうした活用のパターンは実はたくさんあって
send/sent, spend/spent, lend/lent, rend/rent, or blend/blent.
といった組み合わせにも見ることができます。もともと wend はこうしたものの仲間だったのですね。
go に奪われた went
ということで went は元々 wend の過去形、過去分詞形だったのが、go の過去形として奪われてしまったために、元々の wend が wend - wended - wended のように規則活用するようになってしまったようですね。
では went を奪う前の go の過去形はどうだったのかというと yede とか yeed といったものだったようなのですが、そこをなぜ went が置き換えるようになったのかははっきりとしていないようです。
重要な単語であるがゆえに不規則な変化が起きてしまうのでしょうか。