- 作者: 茂木健一郎
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2003/10
- メディア: 新書
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もちろん意識がどこから生まれるのかという答が書いてあるわけではありません。その解明にはまだまだ長い年月がかかりそうです。考察の対象になるものの一つが「同一性」です。あるものとあるものを「同じ」だと人間が判断するとき、たとえば「このピカピカ」と「あのピカピカ」が「同じ」「違う」と判断できるのは何故なのかといった話。
また、別の考察の対象として「ふり」があげられます。例えば、人間は固有の性質を持っているというよりも、各対人関係を通して微妙に違う性格を形成するという話なども含まれて居ます。
結局、どの問題にも明解な答が書いてあるわけではないのですが、人間を単純化してラベルをはりたがる傾向(例えば「あの人はいい人」「あの人は悪い人」「あの人はずるいひと」)を反省させ、「私」というものの不思議さを考え直す刺激に満ちた本といえるでしょう。
誤解をおそれずに言えば、この本が伝えようとしているメッセージは「世界をうまく抽象することができれば、扱うのは容易だ。それが今までの科学アプローチが目指してきた道である。しかし今『意識』を考察しようとする私たちは、その『抽象』そのものの困難さに戸惑っている」というところでしょうか(う〜む、こう改めて書くと当たり前のことではありますが…)。ブレークスルーがどこから来るのかはわかりませんが、単純な細分化/精緻化では「意味」を織り上げることができそうもないという点で、大胆な発想の転換が迫られているのでしょう。