酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

プラネタリウムを作りました。―7畳間で生まれた410万の星

公式ウェブサイト:http://www.megastar-net.com/

知り合いに紹介されて軽い気持ちで読み始めましたが、途中からどんどん面白くなってきて最後は一気に読み終わりました。この本は「個人でプラネタリウムを作る」というとんでもない偉業を成し遂げた著者のこれまでの歴史を、自叙伝のかたちでまとめたものです。「プラネタリウムを作る」といってもドームを作って投影装置をどこからか買ってきたという話ではなく、「投影装置そのもの」を作ったという話です。
これが単にマニアックな人の自慢話かと思うとさにあらず。
この本の面白さは、決して器用でも、秀才でも、お金持ちでもない一個人が、情熱だけを手がかりにもの作りに熱中し、やがて多くの協力者も巻き込んで世界最高水準のプラネタリウム*1を作り上げる過程にあります。
そして最初は頼りなさげな工作好きの少年が、やがてマニアとなり、製作を通してエンジニアとなり最後はアーティストから哲学者の視線になっていく様子を大変興味深く読むことができました。思えばプラネタリウムという素材も良かったのでしょう、一人狭い部屋で眺めるようなものではない以上、それを外に持ち出し他人に見せるという行為が必然的に伴います。このことが関わる人間の輪を大きく広げていく役割を助けてくれたことは想像に難くありません*2
「もの作り」に興味があったり、実際に携っている方々にお勧めしたい本だと思います。四日前にご紹介した「なんでも作るよ。」にも似た感動を覚えました。

*1:なにしろ標準的な商用プラネタリウムがせいぜい9千個程度の星を扱うのに、この著者のプラネタリウムは100万個超の星を扱うのです

*2:逆説的ですが、ご本人があまり器用でなかったことも幸いしたようです。このことによって、素直に多くの人々に教えと協力を請うことになり、それが結果的に大きな成果に結びついているのですから