酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

新聞社―破綻したビジネスモデル

毎日新聞役員の著者が、現在の「新聞」を巡る状況(苦境)を歴史的経緯とともに分析した本です。再販制度で守られ世界にも珍しい宅配制度のビジネスモデルの上に構築された日本の新聞が抱える構造的問題を経営側の視点で淡々と描き出しています。決してセンセーショナルな内部暴露本ではありません。
問題はよく理解できるのですが、ではこれからどうして行けば良いかに関する安易な解が示されているわけではありません。それは読者としての私たちが「新聞」(あるいは報道)に何を期待しているかにも依存しています。
現象面で言えば、私は既に紙の新聞をほとんど読んでいません(自宅ではPCを使わない家族のために購読はしています)。とはいえそんな「不実な」読者でも新聞社のような「組織力」をもった報道機関の存在はこれからも必要だと思っているのです。しかしその「報道機関」はどのようなビジネスモデルを目指すべきなのかは未だはっきりとはしていません。
理想を言えばすべてが「フラット化」して行く中で、散在する情報を「編集」し「評価」し広く「流通」させる哲学(単なる仕掛けではなく)を醸成する必要があるのでしょう。とはいえそれは見えざる神の手を望むような空論ですね。
結局偏見と偏見のぶつかり合いに過ぎないとすれば、最後は不公平あるいは不正に対してそれを発見あるいは救済する手段をどのように準備しておくか(あるいは妨害しないようにするか)ということなのでしょう。