酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

2週間で小説を書く!

2週間で小説を書く! (幻冬舎新書)

2週間で小説を書く! (幻冬舎新書)

気がつけば本年二冊目も幻冬社新書でした。なかなかあざといタイトルの本書を買ったのは、そもそも著者名が「清水義範」のパロディのようだと思ったという、どうにもいい加減な動機でした(笑)。
まあもちろん2週間たてば自動的に小説が仕上がるというわけでもなくて、本書が目指すのはせいぜい「2週間で小説を書く(ための基礎体力を身につける方法を訓練する)!」といったところです。
それでも本書を読んだり2週間分の「演習問題」を眺めているうちに分ってくるのが、小説を書く上で一番大切なものは少なくとも表面的な「テーマ」や「プロット」にあるのではなくて、なによりも「文体」そのもの、読者を引き込む「描写の力」そのものにあるということです。
小説が身にまとう社会的あるいは哲学的なテーマはもちろん大事な要素になり得ますが、それを伝える事が「目的」であるならば別に「小説」という手段をとる必然性はなくて、ノンフィクションや論文などの手段でも構わないということにもなります。
極端な話「何も特別なことが起きない」小説だって、優れた作品となり得ます。長文で一瞬を、また短文で悠久の時間を描き出す事ができるのも小説の変幻自在さを表す特性ですね。
添えられた各「演習問題」は確かに「小説の創作」のための基礎訓練に役立ちそうです(だからといって自動的に傑作がどんどん生み出せるわけではないでしょうが)。
話は脇道にそれますが、目的別の作文技術を私たちは学校時代にあまり意識的に学んだ記憶がありません。少なくとも私が学んだ(?)のはあまり目的のはっきりしない「作文」でした。そもそも「学んだ」のかと改めて問われると、はなはだ心許なくもあります。確かに夏休みの日記、読書感想文などの目的別の作文をする機会はありましたが、それらがどのように異なっており、内容をどのように組み上げて行くべきかについては特に指導を受けた記憶もないのです(せいぜい「思ったままを素直に書け」といった程度のもの)。技術的な報告文書に関しても結局社会に出てからの OJT が一番大きな割合を占めていたと思います。
本書も中高生に対する「創作」の指導書として用いても面白いかもしれません。