- 作者: 牧野武文
- 出版社/メーカー: 毎日コミュニケーションズ
- 発売日: 2010/01/23
- メディア: 新書
- 購入: 7人 クリック: 410回
- この商品を含むブログ (76件) を見る
様々な便利な仕掛けを気前よく公開する Google。その成り立ちとこれからの未来に向けての方向性をわかりやすく解説した本です。個別のサービスについて詳細に解説するための本ではなく、どのような動機で Google が進もうとしているかを眺めながら、現在の進路 (Chrome OS とか Android とかの最新の話題)を解題するという内容になっています。
短い時間で読めるコンパクトな内容なので、このインターネットの巨大企業のミッションについて一通り知っておきたいという方にはお勧めできる本ですね。
しかし、既にネット文化の動向に興味をもって情報収集しているひとには、新しい情報は皆無ですので、そういう方々は Google 哲学の再確認といった位置づけで読むのがよいかもしれません*1。
とまあ大きな不満はない本書なのですが、このタイトルだけは気になりました。
通常「〜の正体」という表現は、あまりよろしくない実体を暴こうとするときに使われる表現だと思っています。まあそうではなくて、中立的な意味であったとしても「〜の正体」は、何か「隠されていたもの」を(いい意味でも、悪い意味でも)顕にするという表現なのではないでしょうか。
ところが、本書が取り上げる Google は、いずれも Google 自身が常日頃世界に対してはっきりと言い続けていることで、特に隠されているわけではないのです。そうした意味で「Google の正体」というタイトルはやや看板倒れだったのかなと思います。これが実は Google 創業者のひとりは某独裁国で洗脳され世界征服戦略の一端を握っているメンバーだとか、実は PC ビジネスの長期的な凋落を予想した Bill Gates がいわば「第2ファウンデーション」として設立したのが Google だった、なんてことなら「〜の正体」というタイトルも府に落ちるというものですが(笑)。
そういえば昨年秋頃に某雑誌に掲載された「Amazon の正体」という記事も、良く知られた情報を使って Amazon を褒め称えるだけの記事だったような・・・そちらにもなんとなく違和感を感じていたので、今回の本のタイトルと合わせて「近頃の『〜の正体』への違和感」の表明としておきます。間違っているとまでは言いませんが。