酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

略して「もしドラ」というそうな。
本屋の店頭に積んであるのを見てそのいかにも「萌え系」の表紙に手を出しかねていたのですが、知人から「読み終わったからどうぞ」といただきました。有難うございます。
とても面白い本でした。小説としてのツッコミどころは沢山あります。なによりご都合主義も甚だしくて、そんな風にはものごとは進まないだろうという方向にどんどんと話が展開します。
しかし、そうしたことはむしろどうでもよくて、本書の特徴はドラッカー氏が語りかけたかったこと - 「物事を成し遂げるための『真摯さの力』」 - について、親しみやすい事例を通して例示を行なったことにあります。
およそ「マネジメント」というビジネス用語が似つかわしくない、高校野球という非営利組織で(しかも女子マネージャーによって)、経営学の泰斗ドラッカーの思想がどう生かされるのかと、少しでも興味を持った方はこの本を楽しく読むことができると思います。
「目的を達成するための組織の構成員」が備えるべき様々な特質は、それが営利・非営利であることに関係しないということが、戯画的な内容からでも読み取ることができて、本書の中で中心的に言及されているドラッカー氏の「マネジメント - 基本と原則 [エッセンシャル版]」も読んでみたくさせる力を持っています。

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

マネジメント[エッセンシャル版] - 基本と原則

実際「もしドラ」の効果で、「マネジメント - 基本と原則 [エッセンシャル版]」の売上も伸びているようで、効果的な宣伝だったと感心せずにはいられません。
柳の下には大量のドジョウがいる出版界のことですから、これから何冊か「お堅い古典書籍」を売るための「萌え系入門書」が何冊か続くのではないでしょうか。