酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

オブジェクト指向入門 第2版 方法論・実践

8月29日発売となりました。

大変長らくお待たせしました。バートランドメイヤー博士の名著「オブジェクト指向入門第2版」の後半部分がやっと店頭に並びます。
この後半ではオブジェクト指向を道具にした分析や設計の原理が、上巻に劣らぬ熱意をもって語られています(他にも周辺的あるいは歴史的なトピックも多数含まれています)。メイヤー博士の意見(当面の結論)に賛同するかたも、批判的な方も、その可能な限り曖昧さを排して進もうとする議論のスタイルそのものには、賛同なさるのではないでしょうか。
本書第一版(20年前)の頃には、より多くの「攻撃的」な記述も見られましたが、第二版では表面的な技法の優劣の比較を乗り越えて、大いに議論を興しソフトウェアの世界に寄与しようとする意思も感じられます(教育者としての役割が中心になられた今では、ますますその傾向が強まっていると思います。それはメイヤー博士に日本版のために書いていただいた前書きにも片鱗を読み取る事ができます)。
メイヤー博士にとってのオブジェクト指向は、抽象データ型を出発点する構築技術です。このため利用者の要求に近いところから実際の実装コードまでを幅広くカバーすることができる議論になっています。
もちろんそれは平坦な道のりではなく、本書にはコピー&ペーストすれば良いようなテクニックも含まれていませんが、言語や環境の違いを乗り越えて、ソフトウェアの構築そのものの本質を見つめ掘り下げたいという意欲に溢れている書籍です。

原書発刊から10年を経た本書ですが、やはりその内容は古びていません(UMLは使われていませんが)。大部ではありますが、少しでも多くの技術者の方々に目にしていただき、更なる議論や考察の種にしていただければ幸いです。

なお本書を読まれようとする場合、もし上巻をまだお読みになっていないときには、ぜひ上巻の第一章からお読み下さい。緻密に積み上げられた議論を堪能することができます。
↓↓↓こちらが上巻です。