酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

ニューヨーク美術案内

ニューヨーク美術案内 (光文社新書)

ニューヨーク美術案内 (光文社新書)

千住博の美術の授業 絵を描く悦び (光文社新書)」「美は時を超える 千住博の美術の授業 (光文社新書)」に続く、千住博氏による美術の世界への招待です。ノンフィクションライターの野地氏との共著になっていますが、前半がメトロポリンタン美術館とMoMA(モダンアート美術館)を題材にして、千住氏自身が「画家の目になって作品を読み解く」というゲームへ読者をいざないます。後半は野地氏が千住氏と一緒に画廊を回りながらそのゲームを第三者の目で描いたもの。また最後の章は、野地氏が一人でそのゲームを行うべく小さな美術館を訪問したルポルタージュとなっています。
千住氏の文章はいつも熱くて、何気なく見ている風景や対象の中に、いかに豊穣な意味が隠されているかを教えてくれます。もちろんそれはその意味を掬い取る読み手の技量にも依存していることで、「豊かな読み」のコツを身に付けることができれば、世界の様相が一変することを気付かせてくれる稀有な本です。
この本を読むと、週末にでも美術館に行ってみたくなること請け合いです*1
なお、上記の「豊かな読み」というのは、北村薫氏の(出典失念!)以下の言葉によるものです。

正しい読み、間違った読みというものは存在しません。しかし豊かな読みと貧しい読みの違いはあります

*1:とはいえ「熱い」文章が苦手な人には辛いかも…(笑)