ご臨終メディア―質問しないマスコミと一人で考えない日本人 (集英社新書)
- 作者: 森達也,森巣博
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2005/10
- メディア: 新書
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個々人の自殺には、もちろんそれぞれの理由があるとは思いますが、日本全体を覆っている「息苦しさ」、世の中を「われわれ」と「あのひとたち」に分類して疑わない「善意の横溢」が、一方で出口のない場所に追い込まれる人々を増やしてはいないでしょうか。
こうした見えない真綿のような空気を作り出しているのは、一体誰なのでしょう。
この本は「放送禁止歌 (知恵の森文庫)」「世界が完全に思考停止する前に」「「A」―マスコミが報道しなかったオウムの素顔 (角川文庫)」「下山事件」などの考えさせる本を次々と出版している、本業ドキュメンタリー作家の森氏と、人間と人間の間を隔てる「境界」にこだわる(らしい)作家森巣氏の対談集で、あとがきには先の衆議院選挙の話が言及されているなど、出来立てのほやほやという感じが溢れています。
対談は日本のメディアの責任をめぐってその立ち位置や性格や問題点を論評する形で進んでいきます。両氏の切迫した気持ちもあいまって、なかなか読ませる内容になっていると思います。両氏の批判の矛先はとりあえずメディアに向かっているわけですが、それはひいては「一人称で論理的に考える」作業が苦手になっている、多くの人々(私も含めて)も無関係ではいられない筈の内容です。