酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

現代思想のパフォーマンス

現代思想のパフォーマンス (光文社新書)

現代思想のパフォーマンス (光文社新書)

この手の「思想解説書」としては、とても面白い本だと思いました(もともとは単行本で出版されていたものが、現在は新書として出版されています)。解説されている「思想家」は、フェルディナンド・ソシュールロラン・バルトミシェル・フーコー、クロード・レヴィ=ストロースジャック・ラカンエドワード・サイードの6人です。
何がどのように面白いかといえば、その構成にあります。各人の解説の章は皆同じ構造を持っていて【案内編】【解説編】【実践編】で構成されています。【案内編】は対象となる思想家に関する導入で、本書で紹介された各人の間での位置付けや歴史的意義に言及した、わかりやすいものです。また【解説編】は各人の思想の中核を重要なポイントに絞って説明した入門編として十分な内容。
そして本書を特徴付け、価値あるものにしているのが【実践編】です。これはその章で説明した思想家の言説を用いて、目の前にあるさまざまなテキスト等を読み解くという試みで、解読、分析、そして議論に付き合うことにより解説された思想の強みや弱みに関して読者としての理解を進めることができるようになっています。
例えばソシュールなら「不思議の国のアリス」、バルトなら「エイリアン」、フーコーなら「カッコーの巣の上で」を読み解くといった具合。
さて、本書は純粋な知的愉しみとして読むことも可能なのですが、読み進めるうちにどうしても世界の認識について様々な思いが湧き出さずにいられないところがあります。あまり仕事絡みの話題と結びつけるのは野暮なのですが、ソフトウェアシステムの要求分析やモデリングがなぜ困難なのかに関する省察を得たり、そしてその混乱を少しでも抑えるためにはどのようにすればよいかについてつらつらと考えるためのヒントを掘り起こすためにも、たまにはこうした「言葉」や「関係性」、そして「権力(ソシュールの用語としての)」などについての思想の跡を辿ってみるのも有用かと思います。
多分時間をおいて2,3度読み直すことが必要かと感じています。