酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

決断の遅いひと

Queen of Procrastination

あるページに、決断の遅い人、行動を起こせない人を表す表現がいくつかあったのでメモしておきます。

procrastinators, lollygaggers, slow-pokes, wafflers and last-minute decision makers

 さてこれらはそれぞれどのような意味でしょう。

procrastinator

"procrastinate" は「ぐずぐずする,先に延ばす,先送りにする」という意味の動詞です。なので procrastinator は「先延ばしにする人」で、良くない意味として使われます。主に「やりたくないので」先延ばしにしているというニュアンスです。宿題や領収書の整理を先延ばしにしているような場合にぴったりです。

lollygagger

"lollygag" というのは「(なにもしないで)のらくらする」という意味の動詞です(男女の間で使うと「イチャイチャする」という意味にもなるようです)。ですので lollygagger は「のらくらしている人」ですが、上の procrastinator が何かを先延ばしにしているのに対して、この場合は単にのらくらしているだけですね。

slow-poke

これは主にアメリカやカナダの口語で使われる表現で「のろま、時代遅れ、飲み込みが悪い人」という意味のようです。まあ悪口ですね。 slowpoke とも書かれます。形容詞として使われるときには「もどかしい、まだるこしい」という意味になるようです。

waffler

これは waffle という動詞から来ているのですが、これは食べ物の「ワッフル」とも綴 りが同じです(でも語源は違ってたまたま同じになったようです)。この場合の waffle は「曖昧なことを言う、煮え切らない態度をとる」といった意味です(イギリスでは「無駄口をたたく、内容のないことを書く」といった意味も入ってくるようです)。

このため wafflerの意味は「煮え切らない態度を取る人」であったり「無駄口をたたく人」といったものになります。

last-minute decision maker

これは一単語ではなく、複数の単語が結びついたものですが、直訳すると「最後の1分で決断をする人」です。つまり「最後のギリギリまで決断しない人」という意味ですね。

【書籍紹介】Scratchではじめる機械学習

ちかごろ、色々なところで耳にする機械学習ですが、自分で試そうと思っても、普段プログラミングをしないひとにはかなりハードルが高いものだと思います。

そんな中、オライリーから出版されたこの書籍は、最初のハードルを取り除き、機械学習を自分でプログラミングしながら、気軽に楽しんだり学んだりできるようにしたものです。


www.amazon.co.jp

全5章構成ですが、全て Scratch で試すことができます。

1,2,3章は用意された機械学習モデルを利用して、簡単な学習を行いつつ、プロジェクトを試す章です。

4,5章は、機械学習そのものの原理的な話や、遺伝的アルゴリズムの話で、やや上級トピックです

よって大人にもなかなか歯ごたえのある内容となっています。micro:bitとの連携の話も出てきて、今年は短いかもしれない夏休みですがたっぷりと「研究」できそうな内容です。

高度なライブラリに目を奪われがちになりますが、そうした材料を与えられた前提で、想像力をさらに広げるチャンスを与えてくれそうな書籍です。

石原 淳也 さん、倉本 大資 さん著
阿部 和広 さん監修(プロフィールのリンクはいずれも Facebook

 

さて、とても簡単といいながらも、本書を読むには少なくとも Scratch の基礎知識は必要ですので、もし Scratch を全く知らない場合には、その部分は別途慣れておいた方が良いでしょう。ネット上のリソースもありますが、以下の書籍は基本を押さえるのにぴったりです

小学生からはじめるわくわくプログラミング
 

be pleased to announce 〜

Lost in translation

名古屋グランパス宮原和也選手がコロナ陽性になったというお知らせの英訳がちょっと問題という話がでました。その文面は以下のようなものだったのですが(これは公式サイト nagoya-grampus.jp の一部です。現在は修正済)... たしかにこれでは宮原選手が陽性になったことが「嬉しい」みたいです。

 

"We are pleased to announce that Kazuya Miyahara has been confirmed to have a positive reaction for a new coronavirus infection." 

 

このようなことが起きるのは機械翻訳の出力結果をノーチェックで使ったからだと思われるので、実際に調べてみました。

 

公式アナウンス:

「このたび、宮原 和也選手に新型コロナウイルス感染症の陽性反応が出たことが確認されましたのでお知らせいたします。」

 

Google翻訳

"We are pleased to announce that Kazuya Miyahara has been confirmed to have a positive reaction for a new coronavirus infection."

 

DeepL翻訳:

"It has been confirmed that Kazuya Miyahara has tested positive for a new type of coronavirus infection."

 

ひとつめで大当たりで、このアナウンスの英訳は Google翻訳だったことがわかります。

(話はそれますが「新型コロナウイルス感染症の陽性反応」というのは変な表現ですね。正確には「新型コロナウイルスに対する陽性反応」と書くべきでしょう)。

 

さて、「自動翻訳の結果を確認するためには、もう一度逆翻訳をしてみると良い」という説を唱えるブログも結構あります。しかしながら単語の置き換えに関する大きな間違いとか、肯定否定の誤りなどを見つけるならともかく、「適切な文章表現かどうか」はなかなか判定が難しいものです。

次の記事などはその辺の事情を丁寧に説明しています。

to-in.com

 

さて、では今回の英文を逆翻訳してみたらどうなるのでしょうか。

 

Google 翻訳による逆翻訳

宮原和也さんが新たなコロナウイルス感染に対して陽性反応を示したことが発表されました」

 

英語の主語であった We が忘れられて、第三者的訳文になっていますね。これはこれでおかしいのですが、逆翻訳中には「陽性になったことを『嬉しい』と思っている」ニュアンスは現れていません。なので逆翻訳を使って翻訳の質のチェックをしようとしても、この問題はみつけることができないということになります。

 

なお英文を

"We are sorry to announce that Kazuya Miyahara has been confirmed to have a positive reaction for a new coronavirus infection."

とすると生成される訳文は

宮原和也さんが新たなコロナウイルス感染に対して陽性反応を示したことが確認されました。」

となりました。文章はほとんど変わらないのですが「発表されました」が「確認されました」に変わっています。でもこれでは "sorry" のもつ「残念感」は表現されていませんね。

 

問題は、「このたび〜をお知らせします」といったパターンの文章を Google 翻訳が、きまり文句として "be pleased to annouce 〜" という文章にしてしまうことです。

 

別の文章:

「このたび離婚したことをお知らせします。」

Google 翻訳:

"We are pleased to announce that you have been divorced."

 

まあこの機械翻訳も誰が離婚したのかがわからなくなっていますが(もとの日本語もそれを明示していない)、それはともあれ「お知らせする」の部分が、問答無用に "are pleased to annouce 〜" になっていることがわかります。これはこうした文章を大量に Google が学習しているからです。

なので逆翻訳をしても、"are pleased to 〜" の部分を「定型文」としてスキップしてしまうのですが、やはり "are pleased to" と言われるか "are sorry to" と言われるかでメッセージのメタな意味は 180 度変わってしまいます。

もちろん「めでたく離婚した」と言いたい場合もあるでしょうから(笑)、何が正解かは文脈を知らずには判断できません。しかし現状の機械翻訳はそうした文脈を理解できないのです。

機械翻訳は便利な技術だと思いますが、そうした限界を理解して、あくまでも補助的な役割だということを忘れないように使いたいと思います。

dab pose

Dab

dab pose

勝利の決めポーズ

あるいは、陽気なおふざけポーズ 

この dab という言葉を見たのは、とあるコメントの末尾に "...., DAB!" と書いてあったものをみたのが初めてでした。

dab という言葉自身は辞書をひくと、「軽くたたく」とか「そっとたたく」という意味が書いてあるのですが、それではこの文脈では意味が通りません。用例を探していくと

dab at a tear with a tissue

ティッシュで涙をそっとおさえる

というものがありましたが、これは「そっとたたく」の仲間ですね。

もともとみた上記のコメントの文脈の中では特に何かを「おさえる」「たたく」という意味はなさそうです。

そしてもう少し探してみると、"dab pose" という表現に出会いました。

 

"dab pose" という文字通り「ポーズ」があるのですが、それは上の写真の男の子がとっているような格好です。

両手を斜め上に上げて、前の方の腕の肘の内側に鼻を当てたような格好 ... これが dab pose です。それでそれが何を意味しているのかということなのですが、Wikipedia には以下のような説明がありました。

a gesture of triumph or playfulness

すなわち勝利の決めポーズ、もしくはおどけたポーズということでしょうか。

もともとのコメントの "...DAB!" はおそらく yeah! とか cool! と同様の掛け声だったのかもしれません。

このポーズは 2015年頃から欧米の若者を中心に流行り始めたようですが、ダンスの振付の中にも登場するようです。

en.wikipedia.org

スポーツ選手などが、勝利の瞬間などにこの格好をする例が増えているとか。

knowyourmeme.com

 興味深いことに、上の Wikipedia の中身を読むと、このポーズのルーツは 90年代の日本のアニメから来ていると書いてあります。特にドラゴンボールZ孫悟飯がよくその格好をしていた ... とあるのですが、ドラゴンボールを見ていなかった私にはよくわかりません(笑)。

こういう格好のことなのでしょうかね?

www.designbyhumans.com

これとは別に、ハシシオイル(大麻から抽出される黄色いオイル)のことも dab と呼ばれることがあるために、ときどき混同されてこのポーズが「麻薬利用」を示唆するものだと非難されることもあるようです。

たとえばサウジアラビアでは、dab pose は麻薬文化を連想させるものとして禁止されているそうで、このようなニュースにもなるようです。

www.barks.jp

異文化の地では、うかつな格好はできませんね。


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get the hang of 〜

〜 のコツをつかむ 

 hang は動詞として使われる場合には「ぶら下がる」「ぶら下げる」といった意味になりますが、名詞として使われるときには

コツ、やり方

という意味があります。このため get the hang of 〜 で、「〜 のコツをつかむ」という意味になるのですね。

I’ll teach you how to use the design program – you’ll get the hang of it after a while.

「このデザインプログラムの使い方を教えてあげよう。少しすればコツがつかめるよ」

まだ何かに慣れないで戸惑っているひとに対して

You’ll get the hang of it.

 そのうち慣れるよ

 と声がけをすることもあるようです。

反対に、「コツを見失う」といったような意味になるのが

  • lose the hang of 〜
  • get out of the hang of 〜

といった表現です。