不思議なタイトルですが、読めば納得。人間が不合理な判断を下してしまう生き物であることを実験で証明していくだけでなく、その「不合理さ」にある傾向がある(つまり「予想通り」)ことまでも実験し、その結果を読みやすくまとめた本です。
社会心理学の実験は、一歩間違えれば倫理観すれすれの感じを受けることもあり、なかなかスリリングです。
この本で明らかにされていく私達人間の「不合理」は、いずれも些細なことのように見えながら、社会のありようにも実は大きな影響を与えているものだと思います。大は社会制度から小は個人のダイエット計画まで、およそ人間の「不合理」さを考慮にいれない「合理的な」計画は、ことごとく根付かないか、強いられる側に無駄な苦労を押し付けることになるだろうことが示唆されます。
教育や組織の管理に携わる方にも興味深い本ではないでしょうか。
もしこの本がお気に召した場合は、以下の本もお勧めしておきましょう(ちょっと邦訳のタイトルが変ですが)。こちらは著者自身の個人的な省察も含まれた、面白い内容です。特に「感情に任せた判断といえども、自己イメージ形成に一役買っていて、その感情の波が去った後でも一度下した判断の影響を長期的に受けている」という実験結果にはぞくぞくするようなスリルを感じました。