酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

アルケミスト―夢を旅した少年

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)

大人版「星の王子さま」という感想を話してくれた方が居たので、入手してみました。

スペインの羊飼いの少年が、お告げによりエジプトへ「宝物」を探しに行ったら実は・・・というお話です。説話風の語り口は「奇蹟」を無条件に肯定しているプロットで、やや単純なものと言えるでしょう。いわゆる「スピリチュアル」な傾向が強い内容なので、そうしたものがどちらかと言えば苦手な私は少々読み進むのに抵抗がありました。

それでもところどころ警句的な文章がちりばめられて、はっとさせられるときがあります。その意味では私にとってはディテールを楽しむ本でした。キリスト教のバックグラウンドを持つ主人公の少年がイスラムの世界を旅する際の違和感や、砂漠の民の価値観などを興味深く読むことができましたし、頭の中で光景を思い浮かべながら読み進めることは楽しい経験でした。

しかし残念ながらタイトルにもなっているアルケミスト(=錬金術師)が途中出てくる必然性は今ひとつわかりませんでした(このアルケミスト自身はなかなか魅力的な人物ですが)。まあスピリチュアル的発想から言えば全ては理由なく既に運命付けられているという説明になるのかもしれませんが*1

*1:決して否定しているわけではありません