酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する

タレント業以外に、いくつかの事業も手がける島田紳助氏が語った、「経営哲学」の本です。といっても成功のための具体的なノウハウが満載というわけではなくて、結局基本的な心構えを説いているだけなのですが(人と違うことをやれ、顧客を満足させろ、従業員がのびのび働ける職場であれ、やることが決まったら事前のリサーチはしっかり等)、でもそこは話術で伸びてきた彼のこと、ついつい引き込まれる面白さがあります。
彼自身が漫才で成功するために考えていたことやってきたことも少し披露されていますが、結局その部分(一定以上の熱意と論理性)は、成功する人一般の「必要条件」のようにも映ります。
それがご本人も良く分かっているからこそ、「鮨屋を経営したくて、人をやとっても成功しない。成功させてやりたい人間がまずいて、その人が一番力を出せそうなのが鮨屋というなら成功する」といった趣旨のことを述べているのでしょう。
とここまで感想を書いてきて、この話は以前ご紹介した BEANS と似ているなと思い出しました

BEANS:Four Principles For Running A Business In Good Times Or Bad - 身辺雑記 - ardbeg1958

上で紹介した本では成功のために必要な4つのPが挙げられていました。すなわち passion(情熱), people(関わる人々、働き手も客も), personal(匿名ではなく、名前を持つ人間としての向き合い), product(売り物の品質) への配慮です。
島田氏の本も最後に passion を持って欲しいという結語にたどり着きます。その他の 3 つの P は「教える」ことができますが、最初の P だけは教えることができないからなのです。成功した人が掲げる灯りは後に続くものの passion をかきたてる有効な手段の一つでしょう。本書もそうした役割こそが一番大きなものなのかもしれませんね。