
- 作者: オノ・ナツメ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2006/10/30
- メディア: コミック
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オノナツメが描き出すのもそのような世界です。
単純であるべき「親子」の愛情さえもが、捻れて現れるこの作品世界では、安易に寄りかかれる場所と価値観を読者は奪われたまま読みすすまなければなりません。まず最初に起きた「できごと」が描写され(それだけでもインパクトがありますが)、そこに至る各登場人物のたちの軌跡が過去に遡って描かれていきます。
なお物語にハッピーエンドを求める方にはおすすめできません。まあそもそも物語の冒頭で起こるべき表層的な悲劇は提示されるのですが、物語が展開されるにつれて、それが多重の意味を背負った悲劇であることがだんだんと明らかになっていくのです。
ありとあらゆる人生の機微が詰め込まれ、それでいて寡黙な世界 - "not simple" が読者にもたらすのはそのような世界です。