- 作者: 大崎善生
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/09/22
- メディア: 文庫
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以前ご紹介した「孤独か、それに等しいもの」と同じ作者である大崎善生氏の短編集です。私にとって大崎氏の小説はこれで二冊目です。
主人公はいずれも、それほど若いとは言えない男性ばかりです。そして彼等は何らかの意味で皆「未熟」であり、物語の中で起きる様々な出来事を通して、自分自身の未熟さに気が付き、それを恥じるという構成になっています。
そして未来に向けて、何かをできそうなこと、最早手遅れなこと、曖昧でまだわからないことなどがそれぞれの短編の最後に置かれていますが、主人公達が自分の自覚した未熟さを無事に乗り越えて行けるか否かははっきりと示されてはいません。
こうした物語は、読者の心構えによって様々な読み解き方が可能なものでしょう。
しかし決して声高に語らないその語り口に身を任せる事ができれば、ときおり本を伏せながら読者自身の物語を思い起こし、静かな午後を過ごす役にはたちそうです。