酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

雲出づるところ

雲出づるところ 上  モーニングKC

雲出づるところ 上 モーニングKC

雲出づるところ 下 (2)

雲出づるところ 下 (2)

感想を書くのが難しい作品です。恐ろしく重苦しいテーマ(人身売買、人種差別、強姦、癌、etc…)を扱っているのですが、どうも粗筋を読んでいるようなもどかしさを感じてしまいます。多分余りにもあり得ない不幸のオンパレードで現実感が麻痺してしまいがちになるからかもしれませんし、やはり短い(上下巻構成)中に物語を詰め込みすぎているからかもしれません。
材料をぶちまけられた段階で、読者もそれを脳内補完しながら読んでいく感覚になるのですがやはり気合を入れて没頭しないと、消化不良気味にはなります。
と、文句のようなことを書き連ねてきましたが、決して嫌いな作品というわけではありません。そうですね丁寧に書かれた映画のためのコンテと言うのが丁度よいのかも。そのコンテを頭の中で一本の映画として完成させるのは読者に任されているという感じでしょうか。作者の土田氏が取り組みたかったのは「いのちの意味」なのでしょうけれど、もちろん簡単に答えが示せるものではありません。
余談ですが、「編集王」の「宮さん」ファンは必読です(笑)。