酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条

日本人の行動原理を、第二次世界大戦直後に書き留められたある技術者のメモをもとに解題していく本です、著者自身の経験も重ね合わせられてよりリアリティが増しています。
敗因21カ条というのは、山本氏が本書で骨子として取り上げているメモを書籍化した「虜人日記」(小松真一氏著)の中で小松氏が箇条書きとして挙げている日本の敗戦要因です。
明治維新で接木された文化のねじれが常識の運用を捻じ曲げて、日本を戦争という破綻に導いた足跡が淡々としたメモの間から浮かび上がってきます。そして敗戦を経て私たちにはまた同じ試練(文化の接木)が行われ、その行動原理は「何かに」抑圧されたままなのです。もともとは1975年頃に書かれて出版されたもののようですね。
「AなのだからBでなければならない」この発想は、理想もしくは目標を述べているのに過ぎないのですが、しばしば B を未達の目標ではなく「事実」として扱う困った傾向が存在します。
たとえば「原子力発電は安全なのだから、危険対策に予算を割く必要はない」といった主張ですね。このばあい当然「安全」は「目標」であって、「事実」ではありません。ところがこれに対して「原発は安全ではない可能性がある」、といっただけで日本では特にヒステリックな反論が返って来ます。これでは何の議論にもなりません。山本氏が本書で淡々と指摘しているのは、世の中に「今でも多く見ることのできる」こうした論理を超えた奇妙な行動原理で、それが過去如何に私たちの社会を破壊して来たかに関する報告なのです。
極めて重要で恐ろしい内容です。