酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

訳せそうで訳せない日本語 きちんと伝わる英語表現

筆者の小松氏はサイマルインターナショナルの創設にも関わり、長年同時通訳の仕事もやってこられたプロフェッショナルです。
その方が、長い経験のなかからなかなか英語にしにくい日本語を、ピックアップしていろいろと議論した本です。
あまり堅苦しくなく、ひとつひとつの表現を興味深く読んで行くことができます。

たとえば【素直な】の項。

候補として考えられるものに candid, frank, gentle, honest, meek, obedient, straightforward, uncomplicated, without objections などが挙げられています。

「かれは素直な子だ」

を、とある和英辞典の例文でみると

He is a meek child.

とあるそうですが、この meek という単語はどちらかといえば overly submissive (過度に人の言いなりになる)といった、ややネガティブな意味をまとっています。本書では「素直」という言葉のもつもっとポジティブな意味を表すために obedient, straightforward などを挙げてはみますが、「どれもピンとこない、一番無難なのは honest だろうか。でも honest の第一義は『正直な』ということで、素直というのはその一部の意味でしかない。。。」と現場の苦悩を滲ませます。

言葉を一つ一つ取り上げながら、日本語、英語それぞれで意味合いの変わって来た経緯なども取り上げているので、非常に興味深い本になっています。

日本語→英語に対して役立つのはもちろん、日頃何気なく使っている日本語そのものの意味をあらためて考えさせる良書だと言えるでしょう。

一日一項目という形で「攻略」していくのも楽しいと思います。