酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

ラスト.ワルツ

ラスト.ワルツ―Secret story tour

ラスト.ワルツ―Secret story tour

印象的な太い線の絵。冒頭の数編は独立した短編になっています。ブラジルで作られた幻の名バイクの話、北朝鮮で捕虜になった米兵の話、チェルノブイリ火災で生き残った消防士の話、アメリカ大陸を自由に往来するヴァイキングの末裔の話、長い年月の後に南米から日本に一時帰国した老人の話、打ち上げ当日に体調を崩しガガーリンに名誉を奪われたソ連のコスモノーツの話、などなど。それぞれが興味深く、まるで出来の良いオムニバス映画をみるような感覚で展開します。
最初この調子でずっと短編が続くのかなと思っていたら、本の後半はこれらの物語が徐々に縒り合わされて行き、最後は登場人物達の物語がオーバーラップし、一つの終焉を迎えます。そして最後に示される「新しい命の誕生」。とても質の良い物語を堪能させて貰いました。これが作者のデビュー作ということですが、熟練の技を感じさせる仕上がりとなっています。早速二作目にして最新の「東京命日」も手に入れてしまいました。
(最近コミックが多いな…と思う私)。