酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

千住博の美術の授業 絵を描く悦び 光文社新書

千住 博 (ASIN:4334032478)
国際的な評価も高い、現代を代表する画家千住博氏が、京都造形芸術大学の学生に向けて行った講義を下敷きに、より広い範囲の読者を想定して、創造への心構えを著した本です。千住氏の考える芸術(芸術とは何か、もしくは芸術とは何で「ない」のか)が噛んで含めるように語られます。もともと学生向けの講義だったことを考えれば当然なのかもしれませんが、一流の実作者の語る内容だけに、大いなる説得力をもって読者の胸に迫ってきます。
ものつくりや、さまざまな表現に取り組む全ての方にお勧めしたい素敵な本だと思います。芸術家だけではなく、技術者にも得るところ大でしょう。
ただ「熱い」メッセージが苦手な人には少し辛いかもしれません(笑)。一つ引用しておきましょう。


(「一流の芸術家に趣味をあれこれやる暇はない」と述べて)
その暇に絵を描いています。絵のことを考えています。絵を描い
て疲れたら絵を描いて疲れを癒す。風邪をひいたら絵を描いて治
す。自分の作品に癒されなくて、勇気や元気を与えられなくて、
どうして他の人を癒したりできるでしょう。