酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

夕凪の街 桜の国

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)


本当に一人でも多くの人に読んで欲しいと思う本です。
まるでゆっくり効き目の出るボディーブローをくらったような感じになる本でした。優しい線で丁寧に描かれた絵が、静かに静かに物語る「普通の人たち」の悲しみと希望の物語です。
3つの物語で構成されています。最初の物語は昭和30年、原爆投下後の「ヒロシマ」で生きる若い女性を描き、続く二つでその弟と弟の子供の話が語られて行きます。描かれるのは「戦争の悲劇」ですが、「はだしのゲン」のようなストレートな表現ではなく、抑制を効かせたものになっていて、それがまた効果を十分に発揮しています。
私の場合読んでいる間、読んだ直後よりも、なぜか時間がたつにつれじわじわと「効き目」が出てきました。この本の35ページは意図的に白紙になっています。そこに読者はそれぞれの物語を描いてこの短いお話を完結させる(あるいは続けていく)ことができるでしょう。