振り返れば遠い日々
23年ぶりにちばてつや先生が短編集を出版しました。基本的な内容はビッグコミックに掲載されたもので(ヤングマガジンからのものもあり)、いくつかのテーマに分かれた短編が収録されています。
一読して、戦中から高度成長期、そして現代に至るまでを現役として生き抜いてきた漫画家の人生を濃密に感じることのできる作品集でした。
収録されている作品は4本です
- 『家路』:満州からの引き揚げの話を描いたもの
- 『赤い虫』:売れっ子漫画家になっていく過程であまりの激務に心身に不調を来した話
- 『トモガキ』:大怪我をしたおかげでトキワ荘の漫画家たちと交流が始まった話
- 『グレてつ』:『あしたのジョー』の連載終了から、どのように『のたり松太郎』の誕生につながったのかの話
1 も 2 も、ここ数年続いているビッグコミックの巻末連載である「ひねもすのたり日記」の中で、さらに詳細な内容がリライトされていますが、この短編集が持つ時の厚みはずっしりと心に響きます。
まあ私も昭和33年生まれなので、戦後直後は知らずとも高度成長の一端を垣間見てきたという体験から、その時代の匂いが想像できるような気がするのかもしれません。3. は藤子不二雄A先生の「まんが道」と組み合わせて読むと味わいが増します。
4. は最近ビッグコミック本誌に読み切りとして掲載された44ページの力作です。隔週とはいえ82歳の現在でも「連載」を持ち、44ページの読み切りまで仕上げるちばてつや先生には脱帽です。
とはいえビッグコミックの巻末連載枠では水木しげる先生が90歳過ぎまでエッセイ漫画を連載なさっていましたので、ちば先生にも是非まだまだ健康に頑張っていただきたいと思います。