酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

漫画の漫画

見出しは本のタイトルではありません。

漫画(や漫画家)についての漫画はいくつかありますが、ここで何冊か振り返っておさらいを(笑)。

まんが道 (1) (中公文庫―コミック版)

まんが道 (1) (中公文庫―コミック版)

藤本弘(F)、安孫子素雄(A)という二人の少年が出会い、漫画にのめり込んだ挙句に手塚治虫氏への憧れを胸に上京し、漫画家として歩みだすまでの道のりを書いた作品。作品中では藤本、我孫子両氏は別の名前(才野、満賀)で登場しますが、手塚治虫氏はじめとする周りの人物は実名で登場します。
まだまんがが社会で認められておらず、すなわち漫画家も一人前の職業だと思われていなかった時代の話です。今から見ると牧歌的ではありますが、まっすぐに新しい「文化」の創造へ向かう熱情に胸打たれます。

まんが道」は漫画という文化を中心に語られる青春群像劇(戦後の社会背景もよくわかるシロモノ)ですが、漫画の技術そのものを論じたものではありません。それに対してこの漫画は、漫画の実際の製作過程や商業的な意味に関して分析と考察を行い、それをストーリーギャグマンガ仕立てにして分かりやすく表現するという色々ひねりの入った作品です。

編集王 1 あしたのジョー (BIG SPIRITS COMICS)

編集王 1 あしたのジョー (BIG SPIRITS COMICS)

暑苦しくも、いつも精力的で真っ直ぐなキャラクターを描く土田世紀氏による、商業漫画・出版事情を取り巻く状況を活写した快(怪)作。まんが道系譜に続くものと言えるのですが、「まんが道」に描かれた、漫画が社会的に認知されなかった時代は既に去り、出版という世界で確固たる地位を得た漫画のあるいみ「成人病」「大企業病」のような事情がフィクションとして描かれます。土田氏によるキャラクターはどれも皆人間臭く(まあ、ときにやりすぎでそれが鼻について苦手な人も多かろうと思います)人間ドラマとしても十分楽しむことができます。

バクマン。 1 (ジャンプコミックス)

バクマン。 1 (ジャンプコミックス)

唯一まだ完結していない作品ですが、内容としては「編集王」と「サルまん」を足して、読者層を少年ジャンプ向けにしたような作品です。でも結局読者層としては大人向けのものになってしまっているとは思います(多分そのせいで、少年誌連載作としての維持が少し苦しくなってきたため最新刊(8)ではテンポが上がりライバルとの競争エピソードが強調されるようになってきたのかも)。
内容的には非常に洗練されていて、様々な漫画内漫画を描き分ける作者たちの技量にも感心します。とりあえず現時点での「漫画の漫画」の完成形と呼んでも良いでしょう。まだまだ連載が続いているので、最後がどうなるかはまだ分かりませんが、これからを楽しみにしたい作品の一つです。