酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

思考の整理学

「考えた事柄」をどのように熟成させ、昇華させ、身のあるテーマにまとめていくかについて書かれた、とても興味深い本です。
この本を読むと著者は本当に「考えること」を楽しんでいる方なのだということがわかります。もう30年近く前の本にもかかわらず、その述べるところはあまり色褪せるところがありません。

しかし注意点がひとつあります。この本は考えをまとめる(熟成させる手順)、考えることの楽しさは語ってくれますが、何を考えるべきかについてはもちろん教えてはくれません(当たり前ですけど)。

そして、著者が本書の中にはっきり書いていないけれど、とても大切な点は、こうした活動は「いつかまとめて誰かに伝えよう・伝えたい」という強い動機がなければなかなかこうした「考えをまとめていく」活動を粛々と続けていくことはできないということです。

少なくとも本書に纏められている手法は、様々な考察を抽象化し、一種の「論文」(べつにコラムでもよいのですが)に仕上げていく過程を記述したもののように思えます。

書くために読み、読むために書く

という言葉があるように、単に知識を集め考察を深めるだけでは、実際の考えも深まらないような気がします。別にマスメディアに対してだけでなくても良いので、日々の生活や、仕事で考えたことがらを、周りの人たちに(そしてでき得るならばもう少し広い範囲の人たちに)伝えることを目標に書きとめ、まとめて行くことを、新年でもありますし、始めてみるのはいかがでしょうか。