酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

夢をかなえるゾウ

夢をかなえるゾウ

夢をかなえるゾウ

いわゆる「自己啓発本」です。どうすれば自分を変えていけるのか、そのヒミツは何か。
実のところこの本に書かれている内容そのものは、他にごまんとある類似の啓発本とあまり変わりません。
それでもこの本は例外的に面白く読み進めることができました。

自分を見つめ何かを少しずつ変えて行くには、ある種の勤勉さが必要ですが、それはなにも大上段に振りかぶった実践である必要はないのでしょう。それよりも、ささやかながらも、小さな todo を着実に消化しながらステップアップしていくこと。最近の流行言葉で言えば GTD が必要なのだと思われます。

多くの類似自己啓発書は、成功するための小さな(あるいは大きな)一連のステップを示し、「さあ、これさえやれば大丈夫です」と呼びかけるだけで、それをやるもやらないも自己責任といった態度が見え隠れします。本書がそうした類似書と違っているのは、「とはいっても、私たちは挫折しやすいよね、三日坊主だよね、それを頭で考えて一度に頑張っても無理だよね、どうすれば少しずつ始める事ができるだろう?」というメッセージを、何とも言えないユーモアに包んで発信していることです。

内容は小説仕立てで、主人公の若いサラリーマンが家に酔って帰り、朝目が覚めるとゾウの神様(ガネーシャ)が登場し、成功の秘訣を教えてやろうというところから話は始まります。ところがこの神様ぜんぜん勤勉ではありません。主人公の家に転がり込んでニート生活、あんみつが大好きで。与えるといくらでも食べ続けるというとんでもない性格です。そのくせ一日ひとつ主人公に課題をだして、実行することを強要します。とはいえその内容そのものは大変リーズナブルなものからはじまり、だんだん難しくなっていくようになっているので、毎日一つずつ課題をやってみると、気がつくと基礎体力ができているという仕掛けです。

本は厚めではありますが、一気に読む事ができます。課題をやらずに先を読むなんて本当は邪道なのかもしれません。しかし、逆に先を早く読んでみたいという興味を掻き立てられるのも事実です。自分の幸せや成功とは何かを、見つめ直すヒントになるかもしれません。

ユーモアだけではなく、なんとなく人を勇気づける文体も、飽きさせません。

「自分探し」の旅に出ようとする人は、まずこの本を読んでから出かけても遅くはありません(笑)。