酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

赤ちゃんの値段

赤ちゃんの値段

赤ちゃんの値段

この本は2004年10月、2005年5月の二度にわたって読売新聞の社会面に連載された新聞記事「赤ちゃんあっせん」「続・赤ちゃんあっせん」を元に加筆されたものです。内容は主に日本の「養子あっせん事情」を中心に解説したものです。
日本国内での養子への根強い抵抗から、日本では実親による養育が困難な子供への対応が、どうしても施設での養育を中心とするものになっていること、それでもあふれる「望まれない子供」に関しては、海外あっせんが多くなること、そしてその海外あっせんは純粋に民間の手で行われており、高額な仲介業者への手数料と共に、多くの赤ちゃんが海外(主に欧米)に渡っていること、そして実際にまともな追跡調査もされていないことなどが報告されています。
日本の縦割り行政の結果ゆえにか、国際養子あっせんに関する国際条約であるハーグ条約を国際社会から何度要請されても批准しない日本の実態も報告されています。
昔の日本の養子は「家の維持」と分かちがたく結びついていましたが、やがて戦後の混乱期に大量の孤児の保護という課題へ移行し、そして今は若年層・貧困層の望まれない妊娠への対応と、その中心となる課題が推移している事情も述べられています。
まずは制度の不備を報告したというところに本書の存在価値がありますが、「親子関係」そのものへの踏み込みはあまり深くないと思いました。まあそちらは書き始めると発散してしまうので、仕方ないのかもしれません。個人的には養親と養子がどのような過程を経て親子関係を構築していくのかに興味があったのですが、そちら方面に関しての記載はあまりありませんでした。