酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

土の中の子供

土の中の子供

土の中の子供

最新の芥川賞受賞作。普通なら文藝春秋を買って読むのですが、思わず単行本を買ってしまいました。所謂純文学系の小説を読んだのは久しぶりです。大変力量のある作家だと思いました。無駄を省いた硬質な描写が小気味良いテンポを生み出しています。
しかしこうした作品は、書くことそのものが作者自身の癒しもしくは救済になっているのだなと改めて思います。
作品に深く入り込むためには、そうした作者の痛みを共有できるほどに読者も内省しなければならないのかもしれません。この作品は子供の頃酷い虐待を受けた男の話ですが、決して後味が悪いわけではないものの、どうにも収まりの悪い思いが胸に残りました。まあそのバランスが作者の力量というべきものなのでしょうけれど。