- 作者: いしかわじゅん
- 出版社/メーカー: バジリコ
- 発売日: 2008/01/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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個人的にはいしかわ氏の漫画評論の面白さは、こういっては失礼かもしれないのですが、一般読者と同じ方向から楽しみつつ分析的に眺めているというところにあると思っています。
学者的な蘊蓄の披露でもなく、ガチガチの技術論でもなく、自身の思想の開陳でもなく、さまざまな作品と作家をとりあげながら漫画としての面白さをあれこれと語るその語り口が、肩の凝らない読み物として現れているのでしょう。
もちろんいしかわ氏は実作者でもありますから、漫画業界そのものにも通じていて、しかも作者の苦労や喜びも知っているために、単なる素人によるファンブックとは一線を画す説得力も持っているのです。
基本的にいしかわ氏ご自身が面白いと思える作品ばかりをとりあげ、作品を読んだ当時の自身の状況や、漫画業界の動きとの対応などを絡めながら、その作品の持つ面白さをいかに伝えようかと苦心して仕上げた文章には好感が持てます。どこを拾い読みしても、漫画好きなら楽しめると思います*1。
ただ先回りをして「絵は下手だけど面白い」とか「中身はないけれど面白い」といった、一般に突っ込まれるであろう欠点を挙げながら褒めるという姿勢も目立ちます。単純に「面白い」と言うと、わかりきった批判が(「絵が下手じゃないか」「内容は下らないじゃないか」といった類)来るので予防線を張らざるを得なかったのでしょうか。
ともあれ、漫画のお勉強をできるというよりは、絶妙な漫画読書ガイドという使い方が良いかもしれませんね。私も一漫画ファンとして、自分の知っている作品に対する視点の微妙な差異を読みながら楽しんでいます。
*1:まとめて一気に読むと胸焼けするかもしれませんけど