今年2月に79歳で亡くなった茨木のり子氏の詩集。表題作の「倚(よ)りかからず」に惹かれて手にしました。世界を鋭利に抉り取る言葉の羅列ではなく、穏やかなつぶやきのような作品集です。
作品「倚りかからず」は次のような言葉で終わります。
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ
できあいの思想、できあいの宗教、できあいの学問、いかなる権威にも倚りかかりたくないというその言葉は、茨木のり子氏の決意であると同時に、読み手にも静かな自立を促すものですね。
過日タイトルだけを挙げてまだ内容をご紹介していなかった、鴻上尚史氏の以下の本が、まるまる一冊を費やして読者に伝えたかったことが、この「倚りかからず」という詩に凝縮されているような気がします。
- 作者:鴻上 尚史
- 発売日: 2006/06/10
- メディア: 単行本
と、今こうして二冊の本の表紙を並べてみると、なんとなく雰囲気が似ていることに気が付きました。