酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

倚りかからず

倚りかからず

倚りかからず

今年2月に79歳で亡くなった茨木のり子氏の詩集。表題作の「倚(よ)りかからず」に惹かれて手にしました。世界を鋭利に抉り取る言葉の羅列ではなく、穏やかなつぶやきのような作品集です。

作品「倚りかからず」は次のような言葉で終わります。

じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある

倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ

できあいの思想、できあいの宗教、できあいの学問、いかなる権威にも倚りかかりたくないというその言葉は、茨木のり子氏の決意であると同時に、読み手にも静かな自立を促すものですね。

過日タイトルだけを挙げてまだ内容をご紹介していなかった、鴻上尚史氏の以下の本が、まるまる一冊を費やして読者に伝えたかったことが、この「倚りかからず」という詩に凝縮されているような気がします。

孤独と不安のレッスン

孤独と不安のレッスン

もちろん、こう書いたからといって、この「孤独と不安のレッスン」の価値が減ずるわけではありません。「数を恃まず自立すること」は、いわゆる「いじめ」の問題とも深く関わっている筈です。

と、今こうして二冊の本の表紙を並べてみると、なんとなく雰囲気が似ていることに気が付きました。