酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

渋谷

渋谷

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子供のころから「がんばりなさい」と励まされ続けてきた子供は、常に「現在」を否定され続けてきたことに他ならない…親の期待に応えてそこへたどり着いてみても、またすぐに「ここではないどこか」へ進むように促される。視線は自分自身をいつか通り抜けて、自分ではない「なにか」だけが回りに見られていて、自分自身は透明になったような錯覚に陥る。
だから「現在のリアルな自分」への「認知」を渇望する。たとえそれが「人間の屑」として非難されようとも「無視」されるよりはまし…。
藤原新也氏久しぶりのノンフィクションです。
この本に出てくるのは自分自身のすがたを捉えられない二人の少女、悲惨な体験をした元援助交際経験のある25歳の女性。そして幻のように著者の前に現れかけて消えていった少女。私はこの本に書かれている少女たちの気持ちが本当のものなのかは判断できませんが、少なくとも圧倒的な「リアル」感を伴って胸に迫りました。
若さゆえの不安定。そしてそれを昔なら大勢の家族が見守りながら子供を「適当」に育てていたのに、いまは親に、そのなかでも特に母親にすべての重責がかかる危うい構造が、徐々に浮かび上がってきます。
人が自立するということはどのようなことなのか…これもまた色々考えさせられる一冊でした。