酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

謎の1セント硬貨 真実は細部に宿るinUSA

謎の1セント硬貨 真実は細部に宿るinUSA

謎の1セント硬貨 真実は細部に宿るinUSA

宇宙飛行士の向井さんの旦那様である、向井万起男氏によるエッセイ。
例えば、表題作は米国内で飛行機に乗っていた際に、「スチール・ペニー」なる謎の1セント硬貨に出会った筆者がメールとインターネットを駆使してその正体に迫るものです。

米国内での日常のさり気ない出来事に目をとめて、好奇心の赴くままに調べていくという内容で、特に大上段に振りかぶった思想はないのですが、小気味良い謎解きのテンポについつい引き込まれていくことになります。調べて行く過程で結構米国人に対して、率直な(ともすると意地悪な)質問を投げかけている箇所も多く、思わずニヤリとさせられるところも多いですね。

しかし率直な質問に、愚直かつ親切に答えてくれる米国人は本当に多くて、私が米国に住んでいたときの印象と大きく変わらない様子も懐かしく感じました。
政治的、経済的な大ニュースばかりが注目されがちですが、このような草の根レベルでの知的なやりとりを通して見ると、多くの米国人(米国ではなく)にしっかりとした大人の文化が根付いているなと感じさせます。

まあだからといって、国の運営が即うまく回るわけではないし、昨今のトヨタ騒ぎのようにセンセーショナリズムに流れやすい層も一定以上存在していて、全体の意思決定には危うさも感じるのですけどね。

日常の謎(疑問)に目を向けるところから、地に足のついた議論を行なう基礎が鍛えられるのだなと考えさせる一冊でした。