酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

すべてのゲストがVIP―ディズニーランドで教えるホスピタリティ

すべてのゲストがVIP―ディズニーランドで教えるホスピタリティ

すべてのゲストがVIP―ディズニーランドで教えるホスピタリティ

とても興味深い本です。ディズニーランドが提供するホスピタリティ(もてなし)の哲学と、それを支えるためのシステムについて書かれた本なのですが、特にそのシステムのあり方が面白いと思いました。次々と新しく入って来るスタッフ(キャスト)をどのように教育するのか、キャストのモチベーションをどのように維持するのか、個々のキャストが持つ暗黙知をどのように共有し洗練していくのか。著者が書いているのは東京ディズニーランドについての話ですが、これは世界共通のシステムのようです。
どんなに分厚いマニュアルと、管理のための飴と鞭を用意しても、スムースな運営に失敗する組織は後を絶ちませんし、当初うまくまわっていたやり方が気が付くと時代遅れになっていて、過去の成功体験に縛られながら衰退していく組織も枚挙に暇がありません。ではディズニーランドはどのようにして、この課題をクリアしているのか?
価値判断のための優先度の定義の共有(Safety > Courtesy > Show > Efficiency)、スキルを維持するためにわざと残されている冗長性、徹底したコミュニケーション、オンとオフの明確な線引きなどが秘密の一部のようです。他にも面白いトピックが書かれています。
生き生きとした職場のありかたという意味で刺激的な本でした。「フィッシュ!―鮮度100%ぴちぴちオフィスのつくり方」などにも共通するテーマですが、より大きく長く続いているビジネスという意味でさらに価値があるのではないでしょうか。