酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

極北クレイマー

極北クレイマー

極北クレイマー

多分本書はこれに続く何冊かのプロローグに過ぎないのでしょう。本書のテーマは「地方医療の疲弊と崩壊」ですが、明らかに背景の説明、事件の展開、主要な登場人物の配置までで終わってしまった感じがあります。
もちろん、読み物としては十分面白く、一気に読ませはするのですが、先に挙げた諸問題に関しては、役者が揃い「さあ、これからどうなる?・・・では続きをお楽しみに!!」といった感じで、なんとも欲求不満が募りますね(笑)。

医師である海堂氏の描く地方病院の惨状(特に赤字地方自治体の)は、リアリティをもって迫ってきます。
そして医療を単なる「サービス業」と同列に考える風潮が、如何に医療をスポイルしているかも。
赤字の3セクテーマパークやスキー場と、公立の市民病院が同列に並べられて存続の議論の対象になり得ることそのものが既に医療崩壊を象徴的に表しています。