酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)」でプレークした梅田氏が、前著出版後に寄せられた様々な感想をとりこみながら、「新しい」働き方について考察した本です。
梅田氏が本書で述べるのは、ウェブという膨大な情報の海を前にして、情報へのアクセス距離が万人に対して等しくなりつつある現在、それを生かして特定の組織には縛られない生き方とはどのようなものがあるのか?という論考です。もちろん示されるのは解ではなく、解の探し方に過ぎません。いままでそのような仕事が成り立ち得るとは思わなかった分野に、新しいプロフェッショナルが生まれている状況を述べ、それに立ち向かうための必要最小限のリテラシーを定義しようとしています。
もちろん、示されるリテラシーは万能の善ではなく、あくまでも「生きるための新しいオプション」を可能にするものに過ぎません。ネットワークから情報を集約し、それを整形再配布する過程で様々な利益を生み出すアイデアを「自分の力」で実装し展開することに興味のある方には役に立つ事でしょう。ただしお急ぎを、この本に書かれたリテラシーが有効なのは、あと数年かもしれません。そのあとネットワークが消え去ってしまうわけではありませんが、そのころには単純(ナイーブともいう)なアイデアで競争できる領域は随分と狭まっていることでしょう。豊かな機能をもつクラウド(雲)に万人が気軽にアクセスできるようになっているだろうからです。