酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

事物はじまりの物語

事物はじまりの物語 (ちくまプリマー新書)

事物はじまりの物語 (ちくまプリマー新書)

ちくまの新しいシリーズ「プリマー新書」の一冊。主に中高生を読者に想定したシリーズのようですが、大人が読んでも面白いという評につられて読んでみました。最初に選んだ本書は、歴史小説家の吉村昭氏が、作品執筆の過程で収集した資料のなかに身近な事物の起源に関する記述が多いのに気がついて、それらをまとめてみようと考えたところから企画されたようです。
起源といっても、対象の発明の経緯そのものが書かれているというよりも、多くは「日本へ導入されたときの事情」といった内容が多いので、もっぱら歴史的な読み物として楽しむことができます。取り上げられているのは「解剖」「スキー」「石鹸」「洋食」「アイスクリーム」「傘」「国旗」「幼稚園」「マッチ」「電話」「蚊帳・蚊取り線香」「胃カメラ」「万年筆」といった本当に身近なものばかり(もはや「蚊帳」は身近ではなくなってしまいましたが)。
スキーはノルウェー語で「薄い板」という意味だとか、花王石鹸は「顔」を洗う石鹸であるところから命名されたとか、日本でマッチ産業を興した人物がさらに製品改良をするために、海外で産業スパイもどきのことをしたことととか。トリビアネタにしてもよさそうな話も含まれています。まあ気軽&手軽に読めますので、読書時間がコマ切れにしかとれないときにでも大丈夫ですね。個人的には政治を中心とした歴史よりも、こうした技術や経済的な側面からみた歴史のほうがずっと興味深く読むことができます。