酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

病牀六尺(びょうしょうろくしゃく)より

「病牀六尺」は、正岡子規が明治35年(1902)5月5日から死の二日前の9月17日まで新聞『日本』に127回にわたって連載した随筆の名前です。子規は脊椎カリエスという激痛を伴う病に苦しめられ続けていたそうです。
その随筆の中にあった一節が心を捉えたので、ここに引用しておきます。

余は今まで禅宗のいはゆる悟りといふ事を誤解して居た。悟りといふ事は如何なる場合にも平気で死ぬる事かと思つて居たのは間違ひで、悟りといふ事は如何なる場合にも平気で生きて居る事であつた。

ともすれば「悟り」とは静的でとりすましたようなイメージがあるものですが、ここで子規が気が付いた「悟り」とは動的で力強く生きる力を体現するもののようですね。とても刺激的なイメージです。

病牀六尺 (岩波文庫)

病牀六尺 (岩波文庫)