酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

あすなひろしの本2冊

2001年に肺がんでなくなった漫画家あすなひろし氏の「追悼短編集」です。出版されたのは2004年3月です。
あすなひろし氏はいっぷう変わった作家でした。普通の人々の生活を描きながらどこか「おとぎ話」感が漂い、読むものを懐かしいような、暖かいような、もの哀しいような気持ちへと誘い込みます。

紹介した二冊は、「青い空…」が少年チャンピオンに連載された同名の連作から(必ずしも連載ではない)で、「いつも春の…」がさまざまな青年誌に発表した代表作と言える作品が集められています。

リアルタイムで読んだのは 1977 〜 1978 頃ののことでした。

抽象的な表現ですが、当時まるで明るい陽射に照らされた静かな真昼の街を歩いているような印象を受けました。それは絵柄のもつ「白さ」に由来するものかもしれません。本書の帯に糸井重里氏が推薦文を寄せていますがその中にある「真昼間のような悲しさ」という表現が言い得て妙だと思いました*1

晩年はほとんど作品を発表していなかったあすなひろし氏が、悲しい事件の起きる現在の状況を見たときに、どのような作品を発表したかは興味深いところです。もちろんもう新作は読むことはできないのですが。

*1:「悲しいほどお天気」というフレーズを思い出したアナタ。同世代です