酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

泳いで帰れ

泳いで帰れ

泳いで帰れ

ガール」「マドンナ (講談社文庫)」「空中ブランコ」「イン・ザ・プール」などなど、都会で働く人たちのいじましくも健気な生き方を小説で描かせたらピカイチの奥田英朗氏が、直木賞受賞パーティを振り切って(笑)アテネオリンピック開催中のギリシャに飛び、野球チーム「長島」ジャパンをはじめとするオリンピック観戦記を綴ったものです。
文章は読みやすいし、それなりに面白いのは確かなのですが、野球をはじめオリンピックにあまり(全く)思い入れのない私には、残念ながら奥田氏の書く小説ほどは楽しめませんでした(失礼!)。
表題の「泳いで帰れ!」とは、アテネオリンピック出場の日本野球チームのあまりにもふがいない戦いぶりに憤慨した奥田氏が、心の中で叫んだフレーズです。まあ暇つぶしには最適な本であるということは言えるでしょう。

さて長島茂雄氏には何の恨みもないのですが、どうして日本人は長島氏のような「不可侵人格」を作り上げてしまうのでしょうか。長島氏が体調を崩したなら、他の適任者を当てれば良いだけです。それなのに、それがタブーになる。あくまでも監督は長島氏でなければならないという流れに誰も口を挟めず、若い人にチャンスを与えることもせず、というセンスが私にはどうにも解せません。
長島氏がかつて優れたプレーヤーであり、日本の野球界に貢献したという実績は動かすことができませんが、だからといってなんでもかんでもおみこしのように担ぎ出して、無理を押し通す必要はない筈です。また気の毒だと思うのが息子である長島一茂氏ですね。名選手は「世襲」などではないはずなのに、周りが勝手に期待して勝手にプレッシャをかけて、結局潰してしまう。こうしたことを無責任に煽るメディアにも原因がありますが、私たちももっと冷静な対応をしたいものですね。