酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

悲しい本

悲しい本 (あかね・新えほんシリーズ)

悲しい本 (あかね・新えほんシリーズ)

確かに「悲しい本」です。これは簡潔な言葉と淡い水彩で描かれた絵本です。
本当に大切な人、モノを一度でも失ったことがあれば、この世にはどうしようもない悲しみ、誰にも慰めることのできない悲しみがあることがわかり、またその悲しみはときのなかで少しずつ遠景化させていくしかないこともわかります。
この本で描かれているのは息子を失った男の悲しみですが、この本をどのように受け止めるかは、読み手の経験によるでしょう。ただ「かわいそう」と思う人もいれば「なにもかもが言葉にならない無力感」を追体験する人もいる筈です。昔とても悲しい思いをした人はその描かれた悲しみにむしろ奇妙な懐かしささえ覚えるかもしれません(それもまた人間の不思議さなのですが)。