酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

ぐるりのこと

ぐるりのこと

ぐるりのこと

児童文学者の著者が、身の回りで起きる事柄に心痛めながらも、自分の違和感に対して真摯に取り組もうとしたエッセイです。まあ身の回りと言っても、新聞ネタになるような子どもの事件や戦争の話も取り上げられているのですが、その捉え方が大所高所からではなく、自分の違和感やその登場人物の心の動きを自分の目で見届けたいというレベルで描かれているのが好感をもてました。
作家個人の「思索メモ」といった趣の本ではあるのですが、その一連の流れの果てに、作家としての「物語へ」の意志を穏やかに再確認する最終章は静謐な感動を呼ぶ力があります。
ゆっくりと対話を交わすように読みたい本ですね。