野矢茂樹(著) いとう瞳(絵)
哲学者である野矢氏の文章に、いとう氏が絵をつけた「哲学絵本」です。といっても絵の部分は抽象的で、特定のキャラクター等が登場するわけではありません。この本は同じ著者による「哲学の謎 (講談社現代新書)」を、さらに易しい語り口にした「考えるヒント」という趣です。
内容としては「人生の意味」や「自意識とは何か」といった哲学にとってのストレートな話題をエプシロンとミューという二人(?)の会話を通して考えていくものです。語り口はとても易しく、難しい言葉も出てこないので小学校高学年や中学生でも十分に読むことができる内容だとは思いますが、その深い内容にたどり着いて遊ぶには、やはりある程度の人生経験が必要なのかもしれません。
大人にとっても、ゆっくりと考え事をして、脳をリフレッシュさせたいときのお供などにお勧めだと思います。もちろん野矢氏の狙いは「哲学すること」は普通のこと、日常生活のなかにたち混ざるべきものであること、何の準備もなく、難しい語彙を知らずとも「哲学」そのものは可能であることを示したいというところでしょう。