酔眼漂流読書日記

本と音楽と酒場と言葉

秋の花 創元推理文庫

北村 薫 (ASIN:448841303X)
このシリーズ中、初めて人の死が直接話題になります。また「飛ぶ馬」「夜の蝉」の連作短編とは異なり、一遍の長編として構成されています。こうした意味で一番「推理小説くささ」を感じてもよいのですが、やはり「謎解き」は重要でありながら、作品を支える要素としての責を弁えており、謎解きのための謎ときや、登場人物を単なる謎解きの道具に貶めるような描写は存在せず、相変わらず人々の日常を彩る謎と心の動きが丁寧に描かれています。
これでシリーズ中残すところはあと一冊(六の宮の姫君)となりました。